山登りのパーティーの先頭と後尾間で使用できるトランシーバはアプリは無いものかと探してみた. 山登りというより沢登りでは,滝の上部と下部では滝の轟音で声が聞こえず殆ど会話ができない. 仕方がないから呼子(笛)を吹いてみるけど,細かいことは伝わらない. 無線機を装備しているのが重要だけど,沢登りのためだけに無線買いたくない. じゃー滝を登った人が降りてくることができるかというと,それができないから困っているのである. そんな人には,せめてみんな持っているスマホにアプリを入れておいて,トランシーバ代わりにして会話できたら嬉しい.
え?Lineで会話すればいいだけじゃない?と思う人は山を舐めている. 山の中,特に沢の中では,4Gがつながらないことなんていつもの事. じゃー普通の電話(IP電話じゃなくて)は?これもつながらない事も. つまりインターネットも携帯電話も全く使えない環境で, 基地局を介さずにスマホ同士直接通信する機能だけで会話したい. それを使えば音声通話だってファイル送信だって原理的にはできるはず. つかえそうなアプリは無いものかと探してみたのメモしておく.
必要な機能
AndroidとiOSの両方で動作すること
パーティー全員がアプリを入れてくれるとは限らない. 頼んでインストールしてくれた人が,自分と異なるOSのスマホを使っていたら?を考えている. 原理的には通信規格はOSに依存しないので, 両OSで動作する同じアプリがあれば良いだけのこと.
アカウント等の登録が不要
これも上と同じ理由.他人にアプリを入れてもらうのに いちいちアカウント登録してくれとか使い始めが煩雑だと結局アプリを入れてくれないことになるかもしれない. そもそもトランシーバとしてつかうのにアカウント登録は本来必要ない.
Wi-Fi DirectかBluetooth Class1で動作すること
基地局が無くてもスマホ2台で直接通信できる通信規格として考えられるのがBluetoothかWi-Fi Direct. Bluetooth class1の有効範囲は見通せる直線距離で100m程度,class2なら10m程度らしいけど, 滝の上部と下部では50m以上離れていることもザラにある. したがって,bluetooth class1しか選択肢がないけどclass1に対応するスマホは(2021/09/09)現在それほど普及していないっぽい. Wi-Fiだと50から100m届くそうで250m届くこともあるとのこと. Wi-Fi Directというのは,ルータを介さずにスマホ対スマホで通信する機能. これはアプリ設定というよりスマホの設定なので,アプリが特定のサーバを介さずに通信する設定なら 要するに一台がアクセスポイントに成って,もう一台がそこにつながる感じだと思う.
操作が簡単であること
沢登りではスマホを防水ケースに入れるはず. 防水ケース越しにごちゃごちゃと操作するのは難しい. 画面をONにして,アプリを起動して,通話ボタンを押す,くらいの単純な操作であって欲しい.
無料であること
こんなアプリ自分でも作れそうだから無料.広告はあってよし.
トランシーバアプリ
必要な機能をいろんなアプリで比較してみた. 検索にあたって使用したキーワードは,「オフライン」,「トランシーバ」,「Walkie Talkie(トランシーバの英語)」など.
OS | アカウント | 通信方式 | 操作性 | 使用料 | |
---|---|---|---|---|---|
Bridgefy | Android / iOS | ? | Bluetooth | 完全無料 | |
FireChat | 存在しない | ? | Wi-Fi | ? | |
Briar | Android | ? | Wi-Fi/Bluetooth | ★★★ | 無料 |
Two Way : Walkie Talkie | Android / iOS | 登録不要 | Wi-Fi | ★★★ | 無料 |
ぐるかむ | Android / iOS | 要登録 | Wi-Fi | ★★☆ | 5ユーザまで無料 |
Bridgefy
AndroidにもiOSにもインストールできたが,両デバイスのBluetoothをONにしてBroadcastモードでチャットしても何も起きない.
FireChat
現在(2021/09/14),Google PlayにもApple Storeにも見当たらない.
Briar
本家サイトを見てもiOS版は存在しない. したがってこの時点で動作テストをやめた.
Two Way : Walkie Talkie
使い始め
このアプリは,インストールしたら即使える. UIがちょっと分かりにくいけど慣れたら意外と単純で簡単だった. 使い方はまず,テンキーボタン(点が9つあるやつ)を押してチャンネル番号設定すること. チャンネル番号が一致している端末同士がつながる. 例えばチャンネル番号を000000にしてると何語か分からない人の会話が聞こえてきた. たぶん,その番号で会話している人がネット上のどこかにいるのだろう. 2台以上のスマホのチャンネル番号を同じ番号にし,発話するときは◯印のボタンを押しながら話す.
沢登りでの使い方
このアプリの良いところはアプリが常駐しており常駐しており, 相手が画面をOFFにしていても声が届くこと. 電源マークのボタンを押せば,常駐をOFFにすることも簡単.これは非常に沢登り向き. 滝の前に着いたら,誰か一人のスマホのテザリングをON(モバイル通信はOFFのまま)にして,アクセスポイントとなった代表のスマホに,他のスマホを接続させる. アプリの常駐をONにして,音量を最大化しておけばあとは防水ケースに入れても聞くだけなら触る必要もない.発話するときだけボタンを押す必要がある.
2台のスマホのうち1台をテザリングONに(アクセスポイント化)し,もう一台のスマホのWi-Fiをアクセスポイントにつないだ. そしえモバイル通信をOFFにしたところ,全く反応しなくなった.つまりこのアプリもオフラインでは機能しない. 「オフラインでトランシーバとして機能する」と書かれたサイトもあるが, 実験をしていないか完全にインターネットから切断した状態を作れていなかったのではないか?
ぐるかむ
使い始め
ぐるかむは,日本製のトランシーバアプリ. トランシーバを使用するグループの管理者と他のグループメンバに分かれており,グループ管理者はアカウントの登録が必要になる. アカウント登録後に,ぐるかむのサイトでログインすると管理画面が表示され,ここでグループ名やユーザ名の設定や,ユーザの追加や削除ができる. 基本的に接続IDが5つ利用可能になり,誰にそれを割り当てるかを設定できる.
アプリをインストールしたらまず接続IDとパスワードを入力させられる. この作業はインターネットに接続されていなければできない. そして接続が完了したらConnectというボタンを,各スマホでConnectボタンを押して状態にしないと会話できない. 1つ目の接続はアカウントの認証で,2つ目はグループどうしの接続だと思う.2段階の接続が面倒. 会話するときは,発話者がボタンを押しながら発声する.
沢登りでの使い方
2台のスマホのうち1台をテザリングONに(アクセスポイント化)し,もう一台のスマホのWi-Fiをアクセスポイントにつないだ. さらにConnect状態にして会話できることを確認したのち,モバイル通信をOFFにしたところしばらく会話できたが, アカウントの認証ができない状態に戻り会話できなくなった. つまりこのアプリはインターネットを使って常時認証をしているため完全に外部と遮断された沢登りの環境では使えないということ. 確かに,公式サイトの「よくある質問」にこういう記述がある.
クローズドの環境にラズベリーパイサーバーやLinuxサーバーを設置するなどの個別提供も可能です。
参考
- Bluetooth
https://ja.wikipedia.org/wiki/Bluetooth - Bluetoothに関するよくある質問 – ①初歩編(FAQ)
https://musenka.com/knowledge/bluetooth-faq/ - 無線LANの電波の届く範囲・距離について
https://www2.elecom.co.jp/network/wireless-lan/column/wifi_column/vol08/ - インターネット不要、iOS/Androidメッセージ/トランシーバアプリ5選
https://news.mynavi.jp/article/20191223-944158/ - ぐるカム ― よくある質問
https://g-incom.jp/faq/ - FireChat ― Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/ファイア・チャット/