2020年2月2日日曜日

関連研究の調べ方

研究は世界初じゃないと意味がない. 良い研究テーマを思いついた時ほど,そのテーマが本当に世界で初めてなのか気になってくる. 大体,いい研究テーマなら自分が思いついたのと同じか少し早いタイミングで世界中に何件かは似たような研究やってる人がいると思った方がいい. 自分だけが思いつくなんてことはまずない. ここではどうやって関連研究を調べるかを具体的に見ていく. 色んな参考図書はあるけど,難しい言葉で抽象論を言ってもよく理解できない人向け.

キーワードを思いつく限り列挙する

まずは思いつく限りキーワードを列挙する. その研究を特徴づけるキーワードでないとうまく関連研究を見つけることができない. これがさらっとできる人はセンスのある人かもしれない. また一つの単語に固執していると見つからない場合もあるので,他の表現ができないか可能性を全部洗いだしてしまう. 絶対に英語のキーワードも加えた方がいい.ほぼ現在の世界共通語になっている英語の方が圧倒的に情報量が多い.

この時重要なのが列挙したキーワードをちゃんとノートか何かにメモっておくこと. 加えて検索キーワードとして単語Aと単語Bを組み合わせて検索したなら「A+B」のような実際に検索する際のクエリをメモっておくこと. そうしないと,どのような組みあわせを既に試し終えていて,どれがまだなのかが最初の数件は分かっても数日たったらすぐにわからなくなる. これは特許資料の調べ方の講義でも弁理士さんが同じことを言っていた.

Google Scholarで検索する

まずGoogle Scholarで検索してみるべし. 普通のGoogle検索ではなくてGoogle Scholarを選ぶ理由は論文以外の記事が出てきにくいから. デフォルトでは同時に特許検索もONになっているので最初はこれをOFFにした方がいい. とにかく一件でも近い研究が見つかれば,その論文の関連研究(Related Work)の章を見れば,従来研究の調査結果が書かれているので手掛かりが爆発的に増える.一件でもいいから見つけたい.そういうときに使うのがこのGoogle Scholar.これでも全然でてこない場合は,特許検索をONにしたり,普通のGoogleで検索してみるのもあり.Youtubeなどの動画サイトやTwitterなどで検索してもいいかもしれない. この過程で別のキーワード(同じ意味の違う言葉)も見つかったりするので,メモったキーワードに追加していくと良い.

Google Scholarでアラート設定する

Google Scholarの検索で出てくるのは今日までの結果. 今後新たに発表されたときは,それをいち早く察知したい. Google Scholarのアラートを設定すべし. アラートは登録しておいたキーワードを含む研究論文が新たに発表されるとそれを自分に通知してくれる. でないと卒論・修論発表直前にこんな近い研究あるよ,とか言われて自分の新規性はほとんど残ってないということになってしまうかもしれない. Googleアカウントが必要になる.

学会のページで網羅的に見る

これはある程度キーワードが分かってきて,1つも関連研究を逃さないための網羅的な調査でやる方法. 学会のページに行くと過去の論文のリストやアブストラクト,購読していればPDFも見られる場合がある. IEEEならIEEE XploreやACM Digital Libraryなどだけど,ここでキーワード検索をしてはいけない. ここまで来たらキーワード検索ではなくて,今までのキーワードの組み合わせだと引っかかってこなかったような,取り逃していた研究論文を見つける段階.だから必ず,どの学会のどの雑誌(予稿集)の何年から何年までのものを調べるぞ,範囲を決めてから順番に見ていくことが大事. ゼミなどで論文の調査結果を発表する場合は,この範囲とセットで発表すればいい.

キーワード検索だけで発表すると厳しい先生なら「そんなも調査再現性がないだろ」と怒ってくるかもしれない. 確かにキーワード検索は,検索ユーザの従来の検索履歴や登録の遅延,検索エンジンによって結果が変ってくる可能性がある. お手軽な代わりに漏れる可能性もあり,他の人が別のタイミングでやっても同じ結果にはならないという問題がある. 再現性のある事実のみを積み重ねるサイエンスでは,論文調査も再現性が重要ということかもしれない.

だから例えばコンピュータグラフィクスの研究論文を調べたいならIEEE TVCGACM TOGなどの既出版雑誌のリストを入手して順番に調べていく.タイトルをみて絶対関係なさそうなものを排除して,ちょっとでも可能性があればアブストをみて,内容が関係あるかもしれないなら,PDFをダウンロードして中身まで見てみる.

学会で調査する

ここまでの調査方法は自分一人でできる方法ばかり. でもやっぱり他人の力を借りるのが一番いい. これができるか出来ないかで情報弱者になるかならないか変ってくる. 自分の研究に近い発表を見つけたらその発表を聞きにいき,従来研究の説明を聞けば一番早い. スライドの撮影をしてしまうのが早いけど,撮影禁止の場合もあるので注意が必要. 発表後も自分の興味を質問すればいいし,他に近い研究が無いか聞いてみるのもいい. とにかく巨人の肩に乗ること,これが一番大事.

SNSで研究者・研究グループをフォローする

世界で自分の研究テーマに近い研究を誰がやっているのかが分かってきたら,その研究者のSNSを探してフォローしてしまうのが一番早い. Twitterのように誰でもフォローできるものなら手っ取り早いし,Facebookのように承認がいる場合は学会で声をかけてフォローしていいか?聞いたらだめだという人は少ない.研究者はアピールするのが好きか得意な人ばかりだから,自分の発信をフォローされているというのは嬉しいもの.関連研究の研究者だからその人の発信を見てるだけで勉強になることが多い.

研究者のページを監視する

SNSをやっていない研究者の場合はどうするのか? その研究者やその人が所属する研究室のページを監視してしまえばいい. Webサイトの更新を監視するツールはたくさんあって「Webサイト 更新 監視」くらいで検索すれば発見できるだろう. Distill Web MonitorはChromeの拡張として使えるので割と便利かも.私もまだ定まったツールはないです.

まとめ

こうやって見ていくと関連研究を調べる方法の多くが本気になれば中学生でも思いつきそうな方法ばかり. つまり本気で自分の研究が世界初だということを示したいという気持ちにさえなれば何なりと方法は見つかると思う. ゼミで「調べてみたのですけど見つかりませんでした」という前に, 上のような方法で調べてみて「全く同じ研究はありませんでしたが少し近い研究ならありました」と発表しよう.