2019年12月19日木曜日

3点を通る平面を同時座標(零空間)で求める

問題

3点$(2, 1, 1), (1, 0, 2), (3, 2, 1)$を通る平面の方程式を求めよ.

同次座標で点,面を表す

3点を$x,y,z\in\mathbb{P}^3$と平面を$\pi\in\mathbb{P}^3$とすると同時座標で次のように表すことができる.

\[ x=\left[ \begin{array}{c} 2\\ 1\\ 1\\ 1 \end{array} \right],\ y= \left[ \begin{array}{c} 1\\ 0\\ 2\\ 1 \end{array} \right],\ z= \left[ \begin{array}{c} 3\\ 2\\ 1\\ 1 \end{array} \right],\ \pi=\left[ \begin{array}{c} a\\ b\\ c\\ d \end{array} \right] \]

これらの3点$x,x',x''$が$\pi$を通るということは同時座標表現では次のように内積で表すことができる.

\[ x^T\pi=0 \] \[ y^T\pi=0 \] \[ z^T\pi=0 \]

3つの式を行列を用いてまとめて成分表示すると次のようになる.

\[ \left[ \begin{array}{c} 2 & 1 & 1 & 1\\ 1 & 0 & 2 & 1\\ 3 & 2 & 1 & 1 \end{array} \right] \left[ \begin{array}{c} a\\ b\\ c\\ d \end{array} \right] = \left[ \begin{array}{c} 0\\ 0\\ 0\\ 0 \end{array} \right] \]

このように左辺の行列を$X$とすると$X\pi=0$を満たす$\pi=0$以外の解$\pi$を求める問題になる. これは線形代数で習う零空間を求める問題と同じ.線形独立な行だけ係数行列をごちゃごちゃ変形する.

係数行列を基本変形で解きやすい形にする

上の線型方程式は,2つの行を入れ替えたり,1行を何倍かしたり, 何倍かしたものを別の行に足したり引いたりしても(基本変形という),方程式自体の本質は変わらない. 係数だけとりだして,この基本変形で解きやすい形にするのが常套手段. 解きやすい形っていうのは,下の行に行けば行くほど0が左側の列から0で埋め尽くされていく形.この場合は3$\times$4行列なので,2行目が0一つ,3行目が0二つになって,0の要素だけみると三角形になっていればいい.

\[ \begin{array}{rrrrrl} (1)& 2 & 1 & 1 & 1&\\ (2)& 1 & 0 & 2 & 1&\\ (3)& 3 & 2 & 1 & 1&\\ \hline (4)& 1 & 0 & 2 & 1& \cdots (2)\\ (5)& 0 & 1 & -3 & -1& \cdots (1) - 2\times(2)\\ (6)& 0 & 1 & -2 & -1& \cdots (3) - (1) - (2)\\ \hline (7)& 1 & 0 & 2 & 1& \cdots (4)\\ (8)& 0 & 1 & -3 & -1& \cdots (5)\\ (9)& 0 & 0 & 1 & 0& \cdots (6) - (5)\\ \end{array} \]

零空間を表現する

$X\pi=0$を満たす必要十分条件は

\[ x^T\pi=0,\ \ \ y^T\pi=0,\ \ \ z^T\pi=0 \]

係数行列を代入すると

\[ \begin{array}{c} a\cdot 1 + c\cdot 2 + d\cdot 1 = 0\\ b\cdot 1 - c\cdot 3 - d\cdot 1 = 0\\ c\cdot 1 = 0\\ \end{array} \]

これをみると$c=0$で確定で,あとは$d$が決まれば$a$も$b$も決まる.つまり一次元の自由度のみ残るので$d=t$と置くと

\[ \begin{array}{c} a = - t\\ b = t\\ c = 0\\ d = t \end{array} \]

なので解$\pi$は次のように表せる.

\[ \pi= \left[ \begin{array}{c} -1\\ 1\\ 0\\ 1 \end{array} \right]t \]

これが求めたい平面の方程式

つまり$\pi$は$[-1,1,0,1]$を何倍かしたものなら何でもいいという意味.それじゃ1倍の$[-1,1,0,1]$だっていいはずなので,求めたかった平面の方程式はこうなる.

\[ -x + y + 1 = 0 \]

上で求めた零空間の正確な答えは,$[-1,1,0,1]$を何倍かした任意のベクトルなら何でもいいというものだった. この方程式の係数に$t$倍した$[-1,1,0,1]$を代入しても,右辺が同じ平面の方程式を表すことは簡単に分かる. 同次座標では,平面は4次元のベクトル$[-1,1,0,1]$そのものであり, 同次座標では$[-1,1,0,1]$も$[-t,t,0,t]$も同じ面と見なすので,同次座標的な解釈でもやはりこの答えは正しい. つまり方程式の係数を余すところなく全部教えてくれるというところが,数学ってすごいと思う.

3点を代入して確認する

上の方程式に,3点$(2, 1, 1), (1, 0, 2), (3, 2, 1)$を代入してみて,方程式が成り立つか確認する.

\[ \begin{array}{c} (2, 1, 3) & \cdots & -2 + 1 + 1 = 0\\ (1, 0, 2) & \cdots & -1 + 0 + 1 = 0\\ (3, 2, 1) & \cdots & -3 + 2 + 1 = 0\\ \end{array} \]

となり,確かに3点とも方程式が成立する.なので答えは正しい.