2022年5月18日水曜日

沢登り用の防水デジタル簡易無線

滝登り時のコミュニケーションは難しい

沢登りをしていて滝の上下に分かれたときにコミュニケーション手段がなくて困ることが良くある. 例えば,リードで滝を登る人(リーダ)とそれに続く人(フォロア),ビレイをする人(ビレイヤ)との間の会話を

  1. ビレイヤ: ロープが残り少なくなってきたら「あと〇メートル」
  2. リーダ: 登り終えてセルフビレイが確保できたら「ビレイ解除」
  3. ビレイヤ: ビレイが解除できたら「OK」
  4. リーダ: ロープを回収してビレイをセットできたら「登ってきて」
  5. フォローワ: 「登りまーす」
  6. リーダ: 「はーい」

みたいなやりとりをする.このやりとりはフリークライミングなどでは成り立っても,滝の音がごうごうと鳴り響く沢では,殆どまともにできないことが多い. これらのコールの多くはそのタイミングが伝わればいいだけなので,作業が順調なら笛で代用できるけれども,ちょっとしたトラブルがあるともう何の笛なのか分からなくなる.

沢登り用の無線

そこで沢登り用に無線機を持っていけば良いと考えるけど沢登りの特殊な環境を考えると要求される機能がある. デジタル簡易無線なら出力も大きく免許不要でクリアな音になるということで比較してみたい.

防水性能

まず当たり前だけど防水性能が高くないといけない. 防水袋に入れておけば良いと考えるかもしれないけど,袋の上からでは操作しにくく袋から出したりすると濡れた手で触らないといけないかもしれない. それに防水袋でも浸水することは良くあること.

VOX

普通無線は自分が発話するときだけボタンを押すPPT (Push to Talk)という使い方をする. ただ,滝を登っている最中にボタンを押すことは難しい場合もあるので,発話しているときだけボタンを押したことにしてくれるVOX (Voice Operated Transmit)の機能があると良い.実際に滝の音がごうごうと鳴り響く状況下で機能するかどうかは不明.ノイズキャンセル機能のあるインカムも あるのでちょっと期待.

Bluetooth

無線機本体は厳重に防水したいのでBluetoothでインカムと本体とを分離できたら浸水したときにも被害がインカムだけになる. マイク付きのイヤホンは無線用途に限らずスマホでの会話用にも売られているので比較的安いというのもある.

有線マイクも防水

市販のBluetoothマイクが完全防水ならいいんだけど,滝の水しぶきを浴びながらVOXが機能するのかあやしい. そこで有線マイクも装備しておきたいのでマイクも防水であるべき. 本体は防水しておいてマイクだけ外にだして別途防水して使う.もちろん水が侵入する可能性があるのでもともと防水であることが望ましい.

沢登り用のデジタル簡易無線

代表的な無線機メーカーは,ICOM,ALINCO,KENWOOD,八重洲無線. この中から上の条件を満たすものをピックアップして比較してみる. 重量は全て付属のバッテリを装着したときのもので,使用時間は各社のバッテーリーセーブ機能ONの時の値. 全て取り扱い説明書を確認の上,Bluetooth接続時にVOX機能が使えることを確認済み.

重量 使用時間 防塵防水 マイク
ICOM IC-DPR7SBT 245g 13時間 IP67 HM-159FS/SJ***
ALINCO DJ-DPS71* 244g 15時間 IP68 EME-80BMA87B (IP67)**
KENWOOD TPZ-D563BT 247g 15時間 IP68 KMC-55 (IP67)
八重洲無線 SR740 237g 16時間 IP68 SSM-10C (IP57)
八重洲無線 SR741 248g 16時間 IP68 SSM-10C (IP57)

* 取り扱い説明書にBluetooth使用時にVOX機能が動作するか,明確な記載がなかった.「VOX 動作レベル」の設定の説明項目にBluetooth非対応のマークが無いのでBluetooth対応と読み取れる.
** Bluetooth接続(他は有線)
***防水性能は本体に準じる

結局

結局どれがいいのだろう? 現状,沢登りに十分耐えうる性能を取説で保証している製品はない. 市販BluetoothヘッドセットでもVOX機能がノイズに反応せずに機能するのかはかなり怪しい. そうかと思って純正マイクを取り付けようとしてもマイクが本体よりも防水性能が低いものばかり.なんで? 純正のBluetoothマイクヘッドホンはそもそも防水でもない. どうして無線という極めてアウトドア向きな製品なのに防水性能を軽視するのだろう? 重さや動作時間は僅かな差なので,この表ではKENWOOD TPZ-D563BTが一番ましなのかもしれない.

参考